
堀畑 二郎

その日は休日出勤でした。注射用蒸留水の瓶2本にその希釈液を入れ、滅菌する際に空焚きしてしまったのです。 当時は空焚き防止装置のない滅菌器でした。その時の事は今でもよく覚えています。空焚きした滅菌器の中を覗いたその瞬間に、 冷たい外気が入ったために瓶が割れて、顔面に割れた瓶の破片と、過熱された希釈液と、その蒸気が顔面に向かって吹き出してきたわけです。
どの程度の火傷だったのかは分かりませんが、冷やすために水道水で顔を洗っていたその手にめくれた顔の皮膚がくっ付いてきました。 そのままタオルで顔を被って、タクシーで近くの医院に連れて行ってもらいました。
入院中は体が元気なだけにずっと横になっていることが出来ず、自由に歩き回ることも出来ず、退屈しました。 何よりも困ったのは食事です、口が思うように開かず、ずいぶん時間がかかりました。いただいたバナナをそのまま頬張ることが出来ず、 手で小さく欠いて口に運びました。
10日間程の入院となったこの事故は、DRL始まって以来の労災事故だったのではないでしょうか。 その処理に多くの方々に大変な迷惑をおかけしてしまいました。また沢山の方々からお見舞いもいただきました。 それ以後沢山の失敗や事故を経験してまいりましたが、労災の書類を書くようなことは幸いにしてありませんでした。 そんなトラブルメーカーも何とか定年退職まで勤め上げることが出来ました。
感謝、感謝。